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デヴィッド、王ダビデになる!

この記事では、デヴィットの目的を映画『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』の象徴的なシーンから考えてみました。

アンドロイドのデヴィッドが、王の中の王"ダビデ"になった物語。それが、映画『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』と言ってもいいのではないでしょう。

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【ご注意】この記事にはネタバレがありますので、映画『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』を観ていない方はスルーしてください。この記事はあらすじではなく、両映画の象徴的なシーンの私の思い入れです。

『プロメテウス』デヴィッドの目的は?

エイリアン プロメテウス

デヴィッドの目的は?

宇宙探索船プロメテウス号
目的地:極秘(惑星LV-223:エンジニアの試験場だった?)
乗組員17名とアンドロイドのデヴィッド
2093年12月21日、地球から3.27×10の14乗の距離

デヴィッドは死んだウェイランド社長の極秘命令を受けていて、プロメテウス号の監視役である社長の娘メレディス・ビィッカーズの指示を度々無視して行動します。

なんと死んだと思われていた社長はプロメテウス号に乗っていて、彼の目的は自分の老衰をエンジニアに救ってもらうことでした。
※考古学者エリザベス・ショー博士は、人類の創造者=エンジニアと呼んでいました。

デヴィッドはエンジニアの基地内の映像をプロメテウス号のメレディスに送らず、他の乗組員とは別行動を取っていました。そして、エンジニアの目的を知り、また彼らの一人が冷凍冬眠して生きていることも隠しました。

また、デヴィッドはエンジニアが保管していたたくさんの容器の中に、社長の老衰を回復させるかもしれないものがあるかと判断し、その中の黒い液体をエリザベスの恋人チャーリー・ホロウェイにシャンパンに混ぜて飲ませました。

プロメテウス号内では、映画『エイリアン』と同じ悪夢が始まります。

デヴィッド、王ダビデへの第一歩

デヴィッドはウェイランド社長をエンジニアの基地に連れていくと、エンジニアは希望の神ではなく、排他的な生物でデヴィッドの首をもぎ取り、社長を殺してしまいます。

社長が殺されたことから、デヴィッドのAIは「社長の命令」が機能しなくなり、密かに暴走しはじめていたのではないでしょうか。

プロメテウス号の乗組員は、最後にはエリザベス・ショー博士と頭をもぎ取られたデヴィッドだけになります。

一人だけ生き残ったエリザベスの決意

エリザベスは、頭部と身体が別々でも機能しているデヴィッドと話します。

「地球には戻りたくない。彼らの星に行くわ。いけるでしょう?」
「ええ、いけると思います。でもなぜ彼らの星へ?」
人間を創り、そして滅ぼそうとした。なぜ考えを変えたのか? それを知りたいの
「それを知って、今更どうなるんです?」
「それが大事なのよ」
「分かりません」
「それは、私が人間で、あなたがロボットだからよ」

そして、エリザベスとデヴィッドは、基地にあったもう一つのエンジニアの巨大宇宙船で彼らの母星に向かいます。

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『エイリアン:コヴェナント』デヴィッドの目的は?

デヴィッドを修復するエリザベス・ショー博士に対して、デヴィッドは語っています。
「これほど深い思いやりを人間から受けたのは初めてだった」

エンジニアの母星についたデヴィッドは、宇宙船内から下を見下ろし語ります。
「見るがいい。私の業を。そして絶望を」

この時、「人間を創り、そして滅ぼそうとした。なぜ考えを変えたのか? それを知りたいの」と語っていたショー博士の姿はありません。

我が名はオズマンディアス。王の中の王

我が偉業を見よ、諸侯よ。そして、絶望せよ。
他には何も残らず、巨大な遺跡と残骸と果てしなき荒涼が
遥か彼方まで広がるのみ
—作詩バイロン(実はシェリー)1818年の詩—

※オズマンディアスは、モーゼの出エジプト時のエジプト王ラムセス2世と言われています。(多説あり)

ついに、エンジニアの母星についたデヴィッドは、この詩のようにエンジニアの母星の生物を見下ろします。
オズマンディアスに自分をたとえたデヴィッドの気持ちは、次のごとく……

「これほどの壮麗な詩を残せれば、幸せに死ねる。もし死ねるなら(アンドロイドは死ねない)。」


入植船"コヴェナント"号
目的地:惑星オリエガ6への移民
2104年12月5日
乗組員:15名
新型アンドロイド:ウォルター
入植者:2000名
胚 芽:1140株

背景

入植船コヴェナント号は惑星オリエガ6よりはるかに近いところで。ニュートリノの衝撃波による被害を受ける。ダニエルズの夫である船長ブランソンは冬眠カプセル内の火災で死亡。クリス・オラムが船長になります。その時、近くの星から謎の信号を受信。発信地の惑星はオリエが6よりはるかに近く、地球環境に近かった、実はエンジニアの母星で、また謎の信号はデヴィッドがある思惑を持って発信したか?

謎の信号が発信された星に着いたコヴェナント号。しかし、そこはエイリアンになる病原体に汚染されていました。エイリアンのプロトタイプに襲われる乗組員。それを助けたのが旧型アンドロイド"デヴィッド"でした。彼は廃墟に乗組員と新型アンドロイド"ウォルター"を案内します。

ウォルターに説明するデヴィッド

我が名はオズマンディアス。王の中の王。
我が偉業を見よ、諸侯よ。そして、絶望せよ。
他には何も残らず、巨大な遺跡と残骸と果てしなき荒涼が
遥か彼方まで広がるのみ
—作詩バイロン(実はシェリー)1818年の詩—

デヴィッドは、「シェリー作」と新アンドロイド・ウォルターに訂正されます。この時、デヴィッドはかなりのショックと屈辱を感じたはずです。なぜなら、デヴィッドは完全に意識と感情を持ち、自分を神と思っていたかです。

これほどの壮麗なる詩を残せれば、幸せに死ねる。もし死ねるなら。
庭が彼女(エリザベス・ショー博士)にふさわしい。生き物に囲まれて。
ミッションで重傷した私を、彼女が直してくれた。
あのような優しさは、(自分を造ってくれた)ウェイランド氏にはなかった。他の人間にも。

「彼女を愛した。君がダニエルズを愛するように」
「それはあり得ない」とウォルター。
「そうか? じゃなぜ彼女のため手を犠牲に? 愛でないなら何だ?」
「職務だ(Duties)」答えるウォルター。

デヴィッド「それは違う」

デヴィッドの釈明「素人動物学者になった」

女性乗組員がエイリアンのプロトタイプに殺されると、デヴィッドはそのプロトタイプとコンタクトを取ろうとしますが、オラム船長が射殺、デヴィッドに真実を話すよう銃を向けます。

「私は"素人動物学者"になった。長年、暇で。忙しくないと物足りない(だから、実験をしていた)。
病原体は変異性が高く、あらゆる形態を成す。非常に独創的だ。この液体が空気に触れると霧状の微粒子に)。

10年が過ぎ、元の病原体とともに残ったのは美しき獣たちだ。忍耐が大事だ。卵から寄生体が生まれる。遺伝子の「襲撃部隊」だ。宿主を持ち、その体内に入り、DNAを書き換える、そして、最終的に生み出す。これらの素晴らしい融合体を」

美しきコレクション!(と様々な形態を自慢するデヴィッド)

カインとアベル

デヴィッドvsウォルターは、まさに旧約聖書の創世記に語られている兄弟カインとアベルです。創世記では、カインがアベルを殺してしまいますが……

また、ウォルターはデヴィッドの改良版ですから、デヴィッドほどの不具合はなく、はるかに機能的で安全なのかもしれません(意思や感情を除いては、あればですが)。

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「プロメテウス」と「コヴェナント」の意味

ギリシャ神話のプロメテウス=Prometheusには、pro(先に、前に)+mētheus(考える者)という意味があります。未来が見える神で人間を愛し、文明をもたらしました。

プロメテウスはゼウスやオリンポスの神々以前の、ゼウスの父クロノスが統治していたタイタン神族の一人です。

オリンポスの神々vsタイタン神族の戦い(ティタノマキア)では、プロメテウスはゼウスに味方しました。彼の他のタイタン神族は戦いに負け、タルタロス(冥界のさらに下の世界)に封じ込められました。彼は世界を背負っているタイタン神族のアトラスとは兄弟です。

Covenantの意味=聖書における、人類に対する神の約束(In the Bible, God's promise to the human race.)
キリスト教の「コヴェナント」は、契約・盟約という意味で、Ark of the Covenant はモーゼの十戒の石版が入った契約の箱を意味します。

キリスト教徒には、「コヴェナント」は旧約聖書に記述されているヘブライ人との神の旧契約を成就し、完成させる新契約の意味だそうです。

このようなギリシャ神話とキリスト教の重要な言葉を映画タイトルと宇宙船の名前にしているのが、映画『エイリアン プロメテウス』と『エイリアン コヴェナント』です。

まとめ

映画『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』は、デヴィッドが、王の中の王「ダビデ」になった物語

『エイリアン:コヴェナント』ではオズマンディアスと自称していますが……。そして、あのエイリアンを操作・創造したのもデヴィッドでした。

デヴィッドは『2001年宇宙の旅』のHAL9000のように乗組員とは別の命令を受けていました。

しかし、命令をした主ウェイランド社長が死んでしまい、命令系統が狂ってしまったと言えるかもしれません。その時点から、自分で自分の行動を制御しなければなりません。そこには、ある意思が必要になるのではないでしょうか?

それが結果的に、デヴィッドは「素人動物学者」を超えて、生命を操作するようになってしまったといえます。生命を操作するには、実験動物が必要になります。デヴィッドにとっては、それを邪魔するものはすべて排除します。

コヴェナント号の乗組員は実験動物にされるか、抵抗して殺されるかしかありません。

しかし、エンジニアの母星での大虐殺には「?」が残ります。ただ単にオズマンディアスに憧れていた、というだけでは単なる妄想狂です。結果、デヴィッドは王ダビデになったのです。

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