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エンジェルフライト

Amazonで配信されているドラマ『エンジェルフライト〜国際霊柩送還士〜』を見たあと、原作を読んでみました。原作は小説や漫画ではなく、佐々涼子氏によるノンフィクションです。

この原作『エンジェルフライト』は、「遺体ビジネス」という衝撃的なテーマから始まり、「忘れ去られるべき人」という切ない話で終わります。その間には、さまざまな出来事が描かれていますが、どれも「国際霊柩送還士」という仕事に関わるものです。

ドラマの中で、松本穂香さん演じる新入社員の凛子が、飛行機を見上げながらこうつぶやきます。

「母さま、私は幼い頃、空を見上げて銀の機影を見つけると、遥か彼方の異国への旅を夢見ていました。でも今はその姿を見ると、あそこに遺体が積まれているかもしれない……そう思います」

このセリフを聞いたとき、私も「国際霊柩送還士」という仕事について、しばらく考えさせられました。

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※本記事は2025年5月3日現在の情報です。最新の情報は、公式サイトでご確認ください。

衝撃の「遺体ビジネス」Angel Freight→Angel Flight

エンジェルフレイトからエンジェルフライト

飛行機で運ばれるのはご遺体ですが、法律上では「貨物(Freight)」として扱われます。そのため、エアハース・インターナショナルの霊柩車には、2人の天使の絵と「Angel Freight」という言葉が書かれています。

「Angel Freight」とは、「天使が優しく運ぶように」という意味をこめた言葉です。そして、木村利惠さんはこの仕事を「エンジェルフライト」と呼ぶようになりました。亡くなった方が天使の翼に乗って旅をするようなイメージです。

※ご遺体が中にあるものを「柩(ひつぎ)」、空のものを「棺(かん)」と呼ぶそうです。

国際霊柩送還という仕事とは?

海外で亡くなった日本人のご遺体や遺骨を、日本へ送り届ける仕事です。逆に、日本で亡くなった外国の方のご遺体を母国に送ることもあります。その際、エンバーミング(防腐処理)が行われます。

国をまたぐため、さまざまな手続きが必要です。たとえば、海外旅行保険の確認や、各国の法的な書類の準備などです。棺に麻薬や武器が隠されて密輸に使われるなどの問題もあります。

※「国際霊柩送還」という言葉は、エアハース・インターナショナル株式会社の登録商標です。現時点では、これに代わる一般的な言葉はまだありません。(2023.4.8現在)

国際霊柩送還士の思い

この仕事は、山科昌美会長木村利惠社長が立ち上げたものです。ドラマ第1話で、米倉涼子さん演じる那美が、凛子に語る場面があります。

「物じゃないんだよ! ご遺体は。(自分は)ただ生きるために必死で働いているだけ」
「それ以上のことをなさっているように思えます」

「"死を扱う"ってことは、"生を扱う"ってことだろ。残された人たちは、前を向いて生きていかなけきゃならない。

そのために、せめて最後のお別れをさせてあげてとことん悲しんでもらう。それが私たちの仕事。
やれるだけのことはやらないと大切な人にお別れも言えないなんて、つらすぎるじゃん。」

エンバーミングとは? 〜なぜ生前の表情に戻すのか〜

エンバーミングは、国際的な資格制度がまだ整っていない技術です。アメリカのようにライセンスが必要な国もあれば、遺体を袋に入れるだけの国もあります。国によっても、業者によってもやり方はさまざまです。

国際霊柩送還士の仕事は、ご遺体を家族のもとへ届けるだけではありません。生前のような姿に戻すことで、家族との最後のお別れを可能にします。事故で亡くなられた方は損傷も多く、また、送還に時間がかかるため、エンバーミングが欠かせません。

この仕事に込められた想いを、米倉涼子さんはこう語っています。

「国際霊柩送還士の仕事は、亡くなられた方のご遺体だけではなく、ご遺族も知らなかった故人の秘めた想いも搬送します」

われわれがかかえる問題の多くは、決着がついていない悲嘆、癒されていない悲嘆から生じている。自分の悲嘆をうまく経過させることができなかったとき、われわれは心と魂を癒す機会を失うのである。

『永遠の別れ―悲しみを癒す智恵の書』
エリザベス・キューブラー・ロス、デーヴィッド・ケスラー他

国際霊枢送還という一見グローバルな命題を書き記すつもりでいて、そこに見えてきてしまうのはごくパーソナルな悲しみだった。たとえ大きな事件、事故の犠牲者であっても、帰ってくる時は、たったひとりの息子だったり、娘だったりするものだ。山科の教えてくれた言葉にこんな一節がある。

親を失うと過去を失う。
配偶者を失うと現在を失う。
子を失うと未来を失う。

『エンジェルフライト』単行本139ページ

そして「忘れ去られるべき人」へ

エアハース・インターナショナルの人たちは、亡くなった方のご遺体を家族のもとに届けます。そして、大切な人との最後のお別れができるように手助けします。

家族にとって、そのお別れの時間はとてもつらいものです。その時の悲しみは、心に深く残ってしまうこともあります。

ドラマの中でもこう語られます。

「せめて最後のお別れをさせてあげて、とことん悲しんでもらう。それが私たち(国際霊柩送還士)の仕事」

でも、その仕事が終わったあと、霊柩送還士たちはこう思っています。

私たちのことは、忘れてもらいたい

自分たちの存在が、家族にとってつらい思い出をよみがえらせるきっかけになってはいけない。だからこそ、自分たちは「忘れ去られるべき人」でいい。そんな静かな思いを胸に、彼らは仕事を続けています。

『エンジェルフライト』登場人物

【エアハース・インターナショナル】
会 長:山科昌美
社 長:木村利惠
取締役:木村利幸(利惠の息子)
社 員:木村桃(利惠の娘)
社 員:古箭厚志(ドライバー)
新 人:川崎慎太郎

【エンジェルフライト】キャスト
米倉涼子:伊沢那美、エンジェルハース社社長
遠藤憲一:エンジェルハース社会長・柏木
松本穂香:新入社員の高木凛子
城田優:マニアックな柊

運ぶのは遺体だけじゃない。

国境を越え、"魂"を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナル
2012年第10回開高健ノンフィクション賞受賞作

『エンジェルフライト』の書評

  • 佐野眞一氏
    この作品のよさは、この仕事に携わる人々の姿が、実に生き生きと描かれていることである。
  • 田中優子氏
    読みながら、なぜ人は「生きているときと同じ顔」を死者に求めるのか、と考え続けていた。
  • 藤沢 周氏
    「死」や「弔い」を日常に新たに提示することで、「命」の重さと「人間の真の幸福」とは何か、を突きつける。
  • 茂木健一郎氏
    生涯に一回しか起こらない大事件と、そこに繰り返しかかわる者の職業生活。
  • 森 達也氏
    3.11という未曾有の災害を体験した翌年という時世も、この作品の追い風になった。

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『エンジェルフライト』 終わりに

佐々涼子さんの本『エンジェルフライト〜国際霊柩送還士』を読み、国際霊柩送還という仕事の存在を初めて知りました。その仕事に深く関わる人たちは、亡くなった方の表情を「生きていたときの顔」に近づけるために、強い思いを持ってエンバーミング(防腐処理)を行っています。

想像してみると、ご遺体のにおいや傷のある姿に、最初はおどろきや戸惑いを感じるはずです。それでも目の前のご遺体と向き合い、残された家族のためにできる限りのことをする。その姿勢に、深い信念を感じました。

正直に言うと、それまで私はこの仕事について考えたことがありませんでした。ドラマ『エンジェルフライト〜国際霊柩送還士』を見て、死や別れについて考えるようになりました。家族との別れは、自分が思っていた以上に重く深いことなのだと感じます。

ドラマの中で、主人公の那美(演:米倉涼子)が見せる「ご遺族への思い」は、少しやりすぎではないかと思ったこともありました。しかし、原作に登場するエアハース・インターナショナル社長の木村利惠さんは、実際にはもっと強くご遺族の気持ちに寄り添い、ときには涙を流していたようです。

そう考えると、米倉涼子さんの演じた那美の姿は、けっして大げさではなかったのだと、今は思っています。。

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※本記事は2025年5月3日現在の情報です。最新の情報は、公式サイトでご確認ください。