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北川景子談
「胸がえぐられるような場面もあるのにも関わらず、原作を読み終えたとき、心の澱(おり)を洗い流せたような、清々しく前を向けたような気持ちになりました」

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※本記事は2024年1月19日現在の情報です。最新の情報は、公式サイトでご確認ください。

島本理生著『ファースト・ラヴ』読書感想 ネタバレ

2020年2月、島本理生著『Red』(2014/9刊行)が映画公開されました。そして、2021年2月には第159回直木賞受賞作『ファーストラヴ』(2018/5刊行)の映画が公開されました。そこで、原作の島本理生著『ファーストラヴ』を読みました。ネタバレの箇所もありますので、ご注意ください。

島本理生著『ファーストラヴ』直木賞決定前の単行本『ファースト・ラヴ

なぜ、娘は父親を殺さなければならなかったのか?

「動機はそちらで見つけてください」
父親を刺殺した容疑で逮捕された女子大生・聖山環菜の挑発的な台詞が世間をにぎわせていた。臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねていくが……。(単行本・帯裏)

【事件概要】
事件の午前中、聖山環菜は都内でキー局の二次面接を受けていた。しかし具合が悪くなり、途中で辞退したという。数時間後には父親が講師を務める二子玉川の美術学校を訪ねている。そして女子トイレに呼び出した父親の胸を、渋谷の東急ハンズで購入したばかりの包丁で刺した。

血を浴びたリクルートスーツのジャケットとシャツを脱ぎ捨て、白いTシャツに紺色のスカートという格好でその場から逃走した彼女は、自宅へと戻る。そこで母親と言い争った後、自宅を飛び出して多摩川沿いを歩いていたところを近所に住む主婦が目撃。

なぜ、娘は父親を殺さなければならなかったのか?
この謎を臨床心理士・真壁由紀(北川景子)と環菜の弁護人・庵野迦葉(中村倫也)があばいていきます。あばくというより、被告人・聖山環菜(芳根京子)の深層意識を解明していくのです。

最後には、意外にも検察官の質問に答えていく過程で、環菜(芳根京子)自身が自分の深層意識を語り出します。由紀(北川景子)や迦葉が殺人の動機を解明するのではありません。

『ファーストラヴ』環菜の裁判

映画『ファーストラヴ』聖山環菜(芳根京子)映画『ファーストラヴ』より聖山環菜(芳根京子)

検察官
「罪名及び罰条、殺人、刑法第199条。
被告人を懲役15年に処するのが相当と考えます」

「亡くなってしまった父には申し訳ないことをしたと思います。だけど、じゃあ、どうすればよかったのか、私にも分からないんです。自分がおかしいことには気付いてたけど、病院にかかるようなお金もなかったし、母は自分でなんとかしなさいと言うので、そうするものだとずっと信じてきました。
私は、どうすればよかったんでしょうか。自分を抑えて試験を乗り切ることができたらよかったのに、と今でも思います。だけどあのときは無理でした」

これほど真っすぐに自分の思いを言葉にすることができるようになった彼女が、今自由の身ではないことが私(真壁由紀)は一臨床心理士として惜しかった。

判決「主文。被告人を懲役8年に処する」

最後の約40ページほどの裁判シーンは、読み応え十分。今まで本心を言えなかった、周りと自分自身に抑えられていた環菜(芳根京子)。『自分の思いを言葉にすることができるようになった彼女』の自立の記録と言ってもいいかもしれません。

環菜(芳根京子)が父親を殺したのかどうかは、本か映画で確認してみてください。

『ファーストラヴ』とは?

単純に実の両親が犯した少女虐待とは違い、知らずしらず家庭環境と自分自身が、本心を隠すように自分に強いた虐待です。

母・聖山昭菜(木村佳乃)は「虚言癖がある」と証言していますが、果たして、環菜は父親を殺したのでしょうか?

一審の判決後、環菜(芳根京子)は由紀(北川景子)に手紙で書いています。

法廷で、大勢の大人たちが、私の言葉をちゃんと受け止めてくれた。そのことに私は救われました。苦しみ悲しみも拒絶も自分の意志も、ずっと、ロにしてはいけないものだったから。

どんな人間にも意志と権利があって、それは声に出していいものだということを、裁判を通じて私は初めて経験できたんです。

庵野先生と控訴も検討したけれど、やっぱり一審の判決をこのまま受け入れようと思います。

環菜と由紀の『ファーストラヴ』

環菜(芳根京子)のファーストラヴ であった「恋と思いたい初恋」は、家出したときに逃げたコンビニ店員の小泉裕二(石田法嗣)。この初恋は奇妙な関係、環菜(芳根京子)が小学生であったことからも添い寝と口だけでの肉体関係。小泉は18歳未満の児童に対する性犯罪を恐れていたので、この関係は3ヶ月で終わっていました。

また、由紀(北川景子)のファーストラヴ は、大学時代の迦葉(中村倫也)との恋に似た?関係。ベットインしても、最後までできなかったのです。どうしてか、二人はその後ギクシャクしますが、環菜(芳根京子)の事件はそのギクシャクさをも昇華していきます。

迦葉(中村倫也)は、由紀(北川景子)の夫である義兄・真壁我聞(窪塚洋介)にこう伝えていました。「大事だったけど、恋愛ではなかった。それがどれだけ特別なことか伝えようと思っても、きっともう由紀(北川景子)は受け入れないだろう」
「恋愛」ではない「特別」って、ソウル・メイトとか? よくわからないですよね。

『ファーストラヴ』のテーマは?

書名『ファーストラヴ』ですが、初恋自体がテーマではなく、ファーストラヴはモチーフ。様々な困難にうちひしがれた魂でも、自分を見つめることで自立できるということが大事なのです。

終わりに。最大の闇—環菜の母・聖山昭菜(木村佳乃)

環菜(芳根京子)の持っていた包丁が父・那雄人(板尾創路)の胸に刺さる前のこと。

検察官「あなたは、(父が)おかあさんに連絡すると言われて、どうしてそんなに取り乱したんですか」
「(毋は環菜の自傷を見て)なにその気持ち悪い傷、と言われたんです。一度テレビで自傷する若者たちの特集をやっていたときも、あんな怖くて気持ち悪いものは見たくない、と吐き捨てるように言っていました。だから、私は、母にはそのことを知られたら絶対にいけないと思っていました。それが理由です」

環菜(芳根京子)は問題があると、それを解決するために自傷行為を繰り返してきました。その環菜(芳根京子)の腕の傷よりも母・昭菜(木村佳乃)の傷はひどかった。その傷は誰がつけたかは、『ファーストラヴ』の原作では説明されません。それを見た由紀(北川景子)はこう思います。

もしかしたら誰よりも環菜が壊れていくことを恐れていたのは彼女(母親)だったのかもしれない。それを直視すれば、自分自身の暗い過去と対時することになるから。だから目をそむけたとしたら。私は環菜が法廷で告白した言葉をそっと呟いた。
「気持ち、悪い」
気持ち悪くなどない。それだけつらい想いをし続けて、耐え抜いてきた証なのだと教える人間が一人もいなかったのだ。あの母親のそばには。今も。

主題から外れているので、『ファーストラヴ』では母である昭菜(木村佳乃)の闇は、それ以上語られません。できれば、その物語を島本理生氏に「続編」として書いてほしいと思いました。

ところで、木村佳乃さんは、環菜の母・昭菜にぴったりのイメージです。映画も見たくなりました。

映画『ファーストラヴ』2021年2月11日(木)公開

【キャスト】
真壁由紀(北川景子)臨床心理士
聖山環菜(芳根京子)父・那雄人を殺したとされる
庵野迦葉(中村倫也)環菜の弁護人
聖山那雄人(板尾創路)環菜の父
聖山昭菜(木村佳乃)環菜の母
真壁我聞(窪塚洋介)由紀の夫で迦葉の義理の兄

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映画『ファーストラヴ』。著者・島本理生のコメント

近年、女性が理不尽に対して声をあげる、という流れが少しずつ生まれている中で、映画『ファーストラヴ』を鑑賞し、そのスリリングな面白さはもちろんのこと、今の日本においてこの映画は社会的にも非常に重要な作品だと確信しました。原作者として関わることができたことを心の底から嬉しく思いました。

殺人事件の容疑者でありながら、混乱した痛みを抱える環菜の内面が、緻密な脚本と演技によって見事に表現されていて、傷ついたまま沈黙してきた女性たちはこの映画を観て、これはいつかの自分だ、と感じる瞬間がたくさんあるのではないでしょうか。

一作家として、又、思春期の頃から堤幸彦監督の作品に夢中になってきた一ファンとして、とにかく一人でも多くの方に観てほしい、と力を込めて訴えたいです。
(映画『ファーストラヴ 』公式サイトより)

島本理生

1983年生まれ、東京都出身。
1998(平成10)年、15歳の時に「ヨル」が「鳩よ!」掌編小説コンクール第二期10月号に当選、年間MVPを受賞する。2001年に「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年には『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を史上最年少で受賞した。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補となるとともに、「この恋愛小説がすごい!2006年版」(宝島社)第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」で第1位を獲得しベストセラーとなった。さらに2015年に『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞、そして2018年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞した。

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