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映画『エターナルズ』〈あらすじ・ネタバレ〉
映画『エターナルズ』には、ギリシャ、シュメール、エジプトやアーサー王などの神話・伝説を思わせるエピソードが満載です。特にギリシャ神話の女神アテナになったのがセナ(アンジェリーナ・ジョリー)、イカロスの神話になったのがイカリス(リチャード・マッデン)です。
セナは創造神アリシェムにプログラムされましたが、ある種のバグが残っていたようです。その結果、セナは前のエターナルの記憶が残っていたため、自分を見失い仲間を殺そうとしました。このことは、映画『マトリックス』の救世主ネオを思い出させます。(詳しくは「エターナルズ真の使命〈ネタバレ〉」参照)
またギルガメッシュ(「ギルガメシュ」とも表記)に関しては、シュメールの英雄名そのままです。ドルイグはテノチティトランの神殿から降りながら民衆の精神を操り和解させる姿は、まるでエジプトの太陽神ラーのようです。
そして、エンドロールの後には『エターナルズ2 』に続くエピソードがありました。セルシの現代の恋人デインが箱を開けると、中にはエクスカリバーのようなソードが入っています。
デインは『エターナルズ』では普通の人間のようでしたが、アーサー王と関係がありそうです。このデインを演じるのが、『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョンを演じ人気を博したキット・ハリントンです。『エターナルズ2 』での活躍が期待されます。
エターナルズ〈起源〉
映画の冒頭に、テロップが流れます。
始めに…
6つの特異点の発生前、この世の創造より前にセレスティアルズが出現。
第一天界人(プライム・セレスティアルズ)のアリシェムが、最初の太陽を創出し、宇宙に光を与えた。
生命は栄え、均衡が保たれた。だがある時、新宇宙から知的生命体を捕食するディヴィアンツが来襲、宇宙は混沌に陥った。
秩序回復のためアリシェムは惑星オリンピアからエターナルズを送り込んだ。
エターナルズはアリシェムを常に信じ、崇めていた。プライム・エターナルズのエイジャックの指導で、ある任務を行うまでは……
【特異点】
物理学者が宇宙を論じる際に出てくる場合は、「宇宙を理解するのに使う数式が誤作動する場所」を指します。例えば、「1÷X」の方程式でXの値がゼロになると、方程式の値が無限大になってしまい、理論が成り立たなくなります。通常の場合、方程式に何かが不足しているか、そんなことが起きるのは物理的にあり得ないケースです。物理学では、最も有名な重力場が無限大になる「重力の特異点」です。
エターナルズ〈あらすじ〉
「時が来た」
7000年前、太陽の炎を背景にエターナルズの宇宙船ドーモは、まるであの『2001年宇宙の旅』のモノリスのような神秘感を漂わせて地球に向かいます。ドーモの中から、セルシとイカリスが地球を眺めています。
セルシ「きれいな星ね」
紀元前5000年のメソポタミア
村人を襲うディヴィアンツ。彼らを助けるエターナルズ。戦いが終わり、ドーモから現れるエターナルズ。村人の子供の石器を美しいナイフに変えるセルシ……。
ここで、ピンク・フロイド『狂気—The Dark Side of the Moon』収録の『Time』が原曲のまま流れます。これには驚いた人々が、多いのではないでしょうか。
何気なく過ごしているとあっという間に時間は流れてしまう、というロジャー・ウォーターズの曲。この曲のテーマは〈時〉で、エターナルズの地球での7000年間の活躍を象徴したのではないでしょうか。映画を一回見ただけでは、現代と過去が何回もくりかえされ、少し分かりづらいかもしれません。
現代のロンドンへ
ロンドンに地震(実は全世界で起きた地震)が起きた後、エターナルズのセルシ(ジェンマ・チャン)とスプライト(リア・マクヒュー)とセルシの恋人デイン(キット・ハリントン)が川辺を歩いています。ここに全滅させたはずのディヴィアンツが現れます。
ディヴィアンツは元来ならば人間を襲うのですが、この時はエターナルズのセルシとスプライトを襲います。しかも、彼らには前にはなかった自己治癒力を持っていました。これには、後でわかる重大な秘密がありました。
エターナルズ最強のイカリス(リチャード・マッデン)も現れ、かろうじてディヴィアンツから逃れた3人。『アベンジャー/エンド・オブ・ゲーム』との関係を説明するかのように、デインがセルシに問います。
デイン「なぜサノスと戦わなかった? 他にも戦争はあったし」
セルシ「介入できるのはディヴィアンツ絡みだけ」
デイン「なぜ?」
セルシ「7000年間、あらゆる局面で人類を守っていたら、今のような発展はなかった」
デイン「大昔にディヴィアンツを滅ぼしたのに、なぜ帰らない?」
セルシ「待ってるの。"帰れ"という命令を」
デイン「イカリスって、太陽の近くまで飛んだ男?」
セルシ「それはスプライトの創作」
スプライトは少女のままですが、彼女がエターナルズの活躍を人々に語り、それが神話になってきました。シュメールのギルガメッシュ神話やギリシャ神話の女神アテナとイカロスのように。
紀元前575年バビロン
プライム・エターナルズのエイジャック(サルマ・ハエック)とアリシェムの通信。
エイジャック「我々の守るバビロンには、次々と難民が集まり、今や地球最大の都市」
アリシェム「他のエターナルズにとって良き手本となった」
エイジャック「どうも。あなたの大いなる計画は尊重しますが、この星には他と違う何かがあるようです。もしかすると今回の犠牲は……」
アリシェム「この星に愛着は抱くな。任務の真の目的だけを考えろ」
エイジャック「わかっています。期待を裏切りません」
この時点では、エターナルズの真の使命はまだわかりません。また紀元400年のグプタ帝国で、イカリスとセルシは一度結婚します。しかし、イカリスはある秘密を持っていることに耐えられなくなり、セルシから去りました。
1521年テノチティトランにて、ディヴィアンツ全滅
テノチティトランは、かつてのアステカの首都。最盛期には人口は約30万人であったと伝えられています。テスココ湖の島上に建設され、現在のメキシコシティに相当します。
(テノチティトラン=ナワトル語で「石のように硬いサボテン」を意味)
ここで、ディヴィアンツは全滅させられます。
「もう手遅れ、みんな死ぬ」
と、なぜかセナ(アンジェリーナ・ジョリー)は暴走し、仲間のエターナルズを襲います。「マアド・ウィアリー(?)」と呼ばれる精神の不安定さが原因です。まだ明かされませんが、セナは重大なことを無意識に記憶しているのです。
そんなセナ について、エイジャックはこう提案します。
「記憶の重みで心が壊れかけている。立ち直るには記憶を消すしかない。アリシャムに報告し、船に戻って処置しましょう」
しかし、セナは記憶をなくすことを嫌がり、ギルガメッシュ(マ・ドンソク)が世話をすることを引き受けます。
また、ドルイグは人類に戦いを止めさせるべく、神殿を降りていきます。まるでエジプトの太陽神ラーのように。
デインがセシルに尋ねたように、ここでディヴィアンツは全滅しましたが、なぜかアリシェムからのオリンピアに戻る命令はありません。そこでエイジャックはいいます。
「解散しましょう。」
こうして現代になりましたが、ロンドンには前より強くなったディヴィアンツがなぜか現れたことにより、セルシとイカリスとスプライトは、世界中の仲間を集めに旅立ちます。
まずはプライム・エターナルのエイジャックの元へ。しかし彼女はすでにディヴィアンツに殺されていました。アリシェムとの交信する能力は、エイジャックの死体から光る石が現れセルシに入り、引き継がれました。
その後も、セルシとイカリスとスプライトは仲間を探しに行きます。ここからが、映画『エターナルズ』の本編と言っていいのではないでしょうか?
エターナルズ真の使命〈ネタバレ〉
ギルガメッシュとセラの元に赴いたセルシは、セラの描いた絵を見ていると急にアリシェムとの交信に入ります。アリシェムは語ります。ロンドンで起こった地震(実は全世界規模)のことから……
"出現"の影響だ。
お前たちの任務の真の目的を教えよう。
セレスティアル・ティアマットを誕生させることだ。
10億年ごとに、私は数々の惑星にセレスティアルの種を植えた。ティアマットの宿主として選んだのが地球だ。ティアマットの成長には知的生命のエネルギーが必要だ。
それを阻止していたのがディヴィアンツだが、エターナルズが絶滅させた。そして人口が増え、必要なエネルギーがたまった。今こそ出現を始める時だ。
セルシ「でも…人類が滅びます」
1つの命の終わりは——別の命の始まりだ。宇宙を形成するのは絶え間ないエネルギーの交換だ。想像と破壊が永遠に繰り返される。
セレスティアルズは宿主のエネルギーを使い、太陽を作る。すると重力と熱と光が発生し、新たな銀河ができる。我々がいなければ、宇宙は完全な闇となり、すべての命が死ぬ。
セルシ「エイジャックは真実を?」
彼女は数百万年にわたり、数々の出現を手伝った。お前(セルシ)もだ。
セルシ「地球が初めての任務です。それまでは故郷のオリンピアに」
オリンピアは実在しない。これがお前の真の故郷だ、セルシ。世界の鍛冶場(ワールド・フォージ)。私はここでエターナルズを作りプログラムした。
セルシ「私たちが死なないのは元々生きてないから。なぜ何も覚えてないの?」
お前たちの記憶は出現のたびにリセットし、ここに貯蔵する。(まるで『マトリックス』のネオのようです)
セルシ「何のために?」
ディヴィアンツの研究のため。ディヴィアンツも私が創った。お前たちを作ったのと同じ目的だ。
どの惑星にも本来の捕食種がいる。それを滅ぼすためにディヴィアンツを送った、知的生命が育つように。
だが設計にミスがあった。ディヴィアンツ自体が捕食種に進化し制御不能になった。
そこでエターナルズを創った。進化することのない合成体としてミスを正すために。お前はエイジャックに選ばれたプライム・エターナルだ。
期待を裏切るな
セルシはアリシェムの期待を裏切ります「大義のために命を奪うのはいつだって過ちよ。出現を止めなきゃ」
エターナルズvsティアマット
こうして、エターナルズはティアマットの出現を止めるべく協力します。
しかし、イカリスとスプライトが反対し、エターナルズに戦いを挑みます。イカリスはエイジャックと同じく、前からエターナルズの真の使命を知っていたのです。
じつは地震があった後、エイジャックはイカリスの元を訪れ「地球は7日後に滅亡する」と伝え、今回はアリシェムの意に反してティアマットの出現を抑えようとしたのです。イカリスは「見せたいものがある」と彼女に言い、地震によって現れたディヴィアンツの住処に案内します。崖の下にたむろするディヴィアンツ。イカリスは飛べないエイジャックを崖から落とし、ディヴィアンツに殺させます。
この時、ディヴィアンツのボスはエイジャックのエッセンスを吸い、エターナルズの目的が自分らの抹殺であることを知ったのです。だから、ロンドンでセルシとスプライトを襲ったのでした。
こうして、セルシをはじめとするエターナルズvsイカリス&スプライトの戦いにディヴィアンツのボスが現れ、最後の三つ巴の戦いが始まります。
はたして、エターナルズはイカリスとスプライトを退け、ディヴィアンツのボスも倒し、ティアマトの出現を止めることができるでしょうか?
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映画『エターナルズ』キャスト
セルシ | ジェンマ・チャン | エイジャックを継ぐプライム・エターナル |
エイジャック | サルマ・ハエック | 元プライム・エターナル |
デイン | キット・ハリントン | 『エターナルズ2 』の主役か? |
セナ | アンジェリーナ・ジョリー | 戦いの女神アテーナの |
イカリス | リチャード・マッデン | エターナルズ最強。目から光線を出す |
ギルガメッシュ | マ・ドンソク | 腕力No.1 |
キンゴ | クメイル・ナンジアニ | インドの映画俳優になったエターナル |
スプライト | リア・マクヒュー | エターナルズの語り部少女 |
ファストス | ブライアン・ヘンリー | 人類に技術を教える |
マッカリ | ローレン・リドロフ | 喋れないが、光速のように速く動ける |
ドルイグ | バリー・コーガン | 人の脳に入り込め指導できる |
エターナルズの7000年間の活躍が神話になる
女神アテーナになったセナ
ギリシャ神話のアテナは、戦いと知恵の女神です。戦いの神にはもう一人アレスがいますが、ただ単に凶暴なだけでアテナにはかないません。ホメロス『イリアス』では、アテナと戦い簡単にやられてしまいます。
アレスがアテナに躍りかかり、槍でアイギス(楯)を突きます。アテナは後ろに下がると、大きな黒い石を拾い上げ、アレスの首のあたりに投げつけました。アレスは倒れて、大きく手足を伸ばして地面に仰向けに倒れました。
「愚か者アレスよ。私の方がそなたよりどれほど強いか、まだわかっていないのか」この時、アレスの愛人アフロディテ(ビーナス)が、助け起こし連れていこうとしました。それに気づいたヘラは、アテナに言います。アレスはヘラ(ゼウスの妃)の息子ですが、父ゼウスともども両親に嫌われていたのです。
「アテナよ、疫病神のアレスをアフロディテが連れていこうとしている」
アテナは二人に近づくと、彼女の胸のあたりを一撃しました。今度は二人とも倒れて、地面に横たわります。
イカロス神話になったイカリス
イカロスは技術者ダイダロスの息子。英雄テーセウスが生贄の一人となって、ラビュリンス(迷宮)のミノタウロスを倒し、彼を恋したアリアドネーの糸玉によってに脱出できました。糸玉による脱出をアリアドネーに教えたのが、ダイダロスです。
アリアドネーの父クレータ王ミーノースはダイダロスの入れ知恵だ分かり、ダイダロスとその子イカロスをラビュリンスに閉じ込めます。
しかし、ダイダロスは人工の翼を創り、空から脱出します。この時イカロスは空を飛ぶ自由に有頂天になり、どんどん高く飛んでいきました。そのため翼に使われていたロウが溶けて、墜落死してしまいます。
イカリスは空を飛べますが、ロウで作った翼は必要としません。しかし、最後にイカリスは自分の行動を恥じて、太陽の中に突入します。
シュメールのギルガメッシュとティアマト
ギルガメッシュ(「祖先の英雄」を意味)とは、古代メソポタミア、シュメール初期王朝時代の伝説的な王(紀元前2600年頃?)です。
ウルク第1王朝の伝説的な王ルガルバンダを父に、女神リマト・ニンスンを母に持ち、シュメールの最高天空神アヌ、大気神エンリル、水と知恵の神エンキ(エア)から知恵を授かりました。
ティアマトは、メソポタミア神話(シュメール、アッシリア、アッカド、バビロニア)における原初の海の女神。淡水の神アプスーと交わり、より若い神々を生みました。恵みをもたらす男神ラフムと女神ラハムなど。この兄妹は次世代の神々の始祖と呼ばれるアンシャルとキシャルを、さらにアンシャルとキシャルは天空神アヌを始めとする新しい神、次世代の神々を生みました。
アンシャルという名は、「アリシェム」と似ていませんか。
『エターナルズ2』〈続編〉は?
宇宙空間にて、セラ、マッカリ、ドルイグが乗ったドーモの中に現れたタイタン人スターフォックス。彼は指パッチンで知られたアべンジャーズの宿敵サノスの弟と紹介されます。
彼は「君達の仲間がヤバい。場所を教える」と教えます。
また『エターナルズ』では人間として行動していたデインですが、複雑な背景がありそうです。その事情をセルシに言おうとした時、彼女は出現したアリシェムに連れ去られました。
エンドロールの後、デインが裏蓋に〈死は褒美〉と書かれた箱を開けると、中に立派なソードが入っています。
デインは呟きます「ごめん、試さなければダメなんだ」
はたして、何を試すのでしょうか?
デイン・ウィットマンは、実は「ブラックナイト」のようです。ブラックナイトとは、アーサー王時代から継承されてきた称号です。となると、箱の中の剣は〈エクスカリバー〉ではないでしょうか。あるいは魔術師によって隕石から造られた剣〈エボニーブレイド〉でしょうか。
アーサー王のエクスカリバー