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映画『ローガン』はX-MEN 慟哭のレクイエム!
映画ウルヴァリン三部作=『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『ウルヴァリン:SAMURAI』『LOGAN/ローガン』
『LOGAN/ローガン』には、全編に重苦しい空気が流れています。戦いのアクションは今まで通りですが、X-MENシリーズの映画とは思えないほどです。その分人間味があふれた映画でもあります。
西暦2029年に、片足を引きずるローガンがいます。2024年型クライスラーの運転手になっているローガンの顔には、ただ生きているだけで、死を待っているかような人間の悲哀があふれています。もはや、不死身のウルヴァリンの勇姿はありません。
また、かつてはミュータントの指導者であったプロフェッサーX チャールズ・エグゼビアは、アルツハイマー病です。ローガンとキャリバンの介護を受けていて、薬が切れるとそのテレパシー能力が暴走し、人間やミュータントに絶大なダメージを与えます。今は忘れていますが、ウエストチェスターで大量殺人を起こしたこともありました。
一方、ザンダー・ライス博士は、今でもミュータントのクローンを造っていました。
しかし、ミュータントはある程度成長してくると自我を持ち、命令を素直にきかない者も出てきます。ザンダー博士はそんな個体は実験の失敗だとし、抹殺処分していました。その一人の女の子がローラ(X-23)です。
映画『LOGAN/ローガン』では、人生の末期のローガンとチャールズに、ローラの運命がかかわってきます。
ローガンは、なぜ不死身ではなくなったのか?
ウルヴァリンとして無敵を誇れたのは、アダマンチウムのおかげといってもよかったでしょう。しかし現在、そのアダマンチウムがローガンの体をむしばんでいたのです。
それは、ミュータントが生まれなくなった時代に関係しています。ザンダー博士が映画『LOGAN/ローガン』の中で言っています。
「人類を完全なものにするため、あらゆる食料や飲料に遺伝子治療できる成分を密かに混入したおかげで、突然変異は根絶され、我々は次の段階に(ミュータントを造った)」と。
ローガンのミュータント遺伝子もそれによって影響されて、アダマンチウムが体をむしばむようになったのです。
©️『LOGAN/ローガン』公式FB
プロフェッサーX チャールズ・エグゼビアは指名手配犯?
かつての指導者としての面影が消えたプロフェッサーX チャールズ・エグゼビア。アルツハイマーを患い、薬が切れて制御できなくなると、そのテレパシー能力は歯止めが効きません。近くの人々やミュータントに心身ともに大きなダメージを与えます。
かつて、チャールズは大量殺戮を引き起こし「脳が大量破壊兵器」として追われる身になっていました。そんな彼を介護していたのが、ローガンとキャリバンです。
チャールズは、もはや指導者ではありません。介護が必要な弱々しい人間で、それが深い悲しみを誘います。
『ローガン』あらすじ
ローラを護るローガンたちとガブリエラ・ロペス一味
「今は2029年だ。ミュータントは過去の話だぞ」と、運転手ローガンが運転する2024年型クライスラーのラジオから流れます。
「ウルヴァリン、やっぱりそうね。助けて欲しいの。あなたしか頼れない」
と、仕事で墓地にいたローガンに訴える女性がいました。「消え失せろ!」と素姓を知られたくないローガン。
その頃、ローガンは同じくミュータントの日光に弱いキャリバンとアルツハイマーを患っていたプロフェッサーX チャールズ・エグゼビアを介護しながらメキシコ国境の南に隠れるように生活していました。
墓地の帰り、チャールズの薬を緊急施設のスタッフから受け取った直後、見知らぬ男がリムジンに乗り込んできます。彼を追っていたドナルド・ピアースです。
「女は現れたか? ガブリエラだ」と、今のローガンの状況を熟知していて「ガブリエラに用がある。俺が責任を持っているものを奪った」と、現れたら連絡しろと脅しました。
再度モーテルからローガンに連絡してきた看護師ガブリエラ・ロペス。「北に逃げて、カナダへ行きたい」と5万ドルでノースダゴタに連れていって欲しいとローガンに頼みます。一緒にローラもいました。
「どうやって俺を見つけた? 男が俺に会いに来たぞ」
「目撃情報が出たの"ウルヴァリンに似た年配の運転手がエルパソに"と」そう言う彼女は、深い怪我をしていました。
隠れ家に戻ると再度「急いで来て」とガブリエラからの連絡。すぐに戻ると、彼女は殺されていました。そして、ローラの姿はありません。
隠れ家に戻ったローガン。すぐさま彼を追ってきたドナルドは、なぜ連絡しないと詰め寄ります。そんな彼を、ローラが金属棒を投げて気絶させました。彼女はクライスラーのトランクに隠れていたのです。
キャリバンにドナルドをどこかに捨ててくるよう行かせたローガン。しかし、キャリバンは目を覚ましたドナルドの敵ではありません。
こうして、逃げるローガンたちと追いかけるドナルドたちの戦いが始まったのです。
ドナルドに捕らえられたキャリバンは、匂いでミュータントを嗅ぎつける能力を持っていました。彼はその能力で、ローガンたちを見つけるよう強要されます。日光に火傷する弱点をつかれたのです。
©️『LOGAN/ローガン』公式FB
プロフェッサーX チャールズ・エグゼビアの死
途中親切な農家の家族3人と幸せな夕食を過ごすチャールズ・ローガン・ローラ。彼ら3人はまるで本当の祖父・父・娘のようでした。
その時水がとまり、農家の主人とローガンが嫌がらせで2.5km先の止められた給水ポンプの元栓を確認に外出します。
その頃、ザンダー博士が送り込んだ凶暴性だけを植え込まれたローガンのクローンX-24。彼は2階のベッドで休んでいたチャールズをその爪で突き刺します。飛びかかるローラ。X-24はローラを捕まえます。異変に気づいた農家の息子と母親がやってきましたしたが、2人ともX-24に殺されます。
その時帰ってきた農家の主人とローガン。殺される妻の悲鳴に2階にかけあがる主人でしたが、X-24に刺され階段を転げ落ちます。ローガンは主人を見ると、ローラをつかんで降りてくるX-24にと対面。
しかし、ローガンはチャールズのことが気になり、X-24には何もせず2階へ。瀕死のチャールズを抱きかかえ家を出ると、車の荷台に寝かせます。しかし、チャールズは「太陽号だ」と言って息を引き取ります。太陽号とは、将来ローガンと海上で暮らそうと考えていた夢の船でした。
農家に嫌がらせをした男たちがやってくると彼らを殺すX-24。収拾がつかなくなって、ザンダー博士はドナルドたちに出動を命じます。捕らえられていたキャリバンは、彼らを阻止するために手榴弾2個を爆発させました。
ローガンとX-24の死闘がはじまります。最後は瀕死の主人がX-24に発砲し、車を体当たりさせます。そして、主人はローガンにも銃を向けた時、死んで崩れおちました。
かなりのダメージを受けたローガンとローラは農家を離れ、湖のほとりにチャールズを埋葬しました。
「エデン」とローガン/ウルヴァリンの死
気を失ったローガンの代わりにローラが運転した車は、とうとう「エデン」にたどり着きました。そこには、ローラと同じようなミュータントの子供たちがいました。ローガンは2日間眠ったままでした。
目を覚ましたローガンはすぐカナダへ向けて出発するよう助言します。しかし、彼らは明朝カナダへ向かうことにしていました。また、子供たちは約束の残金を払おうとしましたが、ローガンは受け取りません。
明朝、子供たちはローガンの枕元にリクター(回復剤)を残して、出発していきました。ローガンは目を覚ますと、多くのドローンと車を確認しました。ザンダー博士とドナルドたちです。リクター全部を打って、ローガンは助けに向かいます。
その頃、追いつかれた子供たちは超能力を使い抵抗していましたが、次々に捕まってしまいます。残るのはローラだけになった時、ローガンが現れ彼女を助けました。次は捕まった仲間を助けることです。
ローラに「チャンスを待て」と言い、ローガンはザンダー博士とドナルドの前に現れます。しかし、リクターの効果は切れる寸前で、ふらふらのローガン。そんな彼に、ザンダー博士は説明します。
「人類を完全なものにするため、あらゆる食料や飲料に遺伝子治療できる成分を密かに混入したおかげで、突然変異は根絶され、我々は次の段階に」その後はローガンが言いました。「ミュータントを造った」と。
ローガンはザンダー博士の首に発砲し殺し、ドナルドの手も打ち抜きました。ドナルドはX-24を解き放ちます。そんなドナルドは、子供たちの超能力で殺されてしまいます。
戦いのクライマックスはローガン&ローラvsX-24の死闘。ローガンは何回もX-24の爪に刺され、木の枝に体を打ち付けられ死ぬ寸前になりました。その時、ローラがアダマンチウム弾をX-24の頭に打ち込みます。
ローガンは言い含めます。
「もう戦う必要なない。彼らの思いどおりに生きるな、いいなローラ」
「パパ」と涙を流しながら答えるローラ。
「こういう感じなのか……」と愛娘を見つめながら、ローガンは死んでいきます。
「イヤ、パパ」と、泣きながらローラは言います。
ローガンとチャールズの死には、モーツァルトの「レクイエム:ラクリモーザ(涙の日)」を捧げたいと思います。
ローラの哀悼
"人の生き方は決まっている 変えられない
人を殺した者は 元には戻れない
正しくても 人殺しの烙印を押される
帰ってママに もう大丈夫だと伝えろ
谷から銃は消えた"
ローガンを埋葬した子供たちは、カナダに向かって歩き出します。ローラもローガンの十字の墓標をXに傾けると、みんなの後を追っていきます。
【追伸】
この映画を最後に、ローガン/ウルヴァリン役ヒュー・ジャックマンとプロフェッサーX チャールズ・エグゼビア役パトリック・スチュワートは、X-MENシリーズからの引退を発表しました。
終わりに
この映画『LOGAN/ローガン』は、X-MEN 慟哭のレクイエムです。
ローガン/ウルヴァリンとプロフェッサーX チャールズ・エグゼビアの姿はなんとも痛ましい限りです。特にチャールズは車椅子の生活ですから、きっぱりした指導者の姿がないと、要介護の老人そのものです。
誰がこんなプロフェッサーXを想像したでしょうか。
そして、造られたミュータントのローラですが、少女の凶暴なイメージから最後には親を思う切ない小女に変わっていました。ローラの成長は、映画『LOGAN/ローガン』の魅力と言ってもいいのではないでしょうか。
そして、ウルヴァリン三部作で、X-MENの第三期は終わったといっていいでしょう。ローラのスピンオフの映画も予定されているといいます。
ここで、改めてX-MENシリーズを振り返ってみましょう。
X-MENシリーズの第一期
- X-MEN
- X-MEN2
- X-MENファイナル デシジョン
X-MENシリーズの第二期
- X-MEN:ファースト・ジェネレーション
- X-MEN:フューチャー&パスト
- X-MEN:アポカリプス
- X-MEN:ダーク・フェニックス
「ウルヴァリン」三部作
- ウルヴァリン:X-MEN ZERO
- ウルヴァリン:SAMURAI
- LOGAN/ローガン
特におすすめは、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』とこの『LOGAN/ローガン』でしょうか。
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』はアメリカとソ連の冷戦時代のキューバ危機がモチーフにされました。素晴らしい脚本で、プロフェッサーXが車椅子の生活になった理由もよくできていました。